最新の嘘NEWS。このブログの記事はすべて虚報ですのでご了承ください。移転しました→ http://news-lie.net

by 編集主幹

記事ランキング

カテゴリ

全体
コラム
小説:植山青彦
経済:大村兼
政治:中島良平
芸能: 水野亜紀
翻訳ニュース:木田彩加
スポーツ:進藤進
社会:十階堂将也
国際:英子クリス
文化:鴨原蘭
科学とコンピュータ:小野将吾
支局長:モリシタ
今日の一枚
書く:香春嘉子
パズル:ハタケイタ
特集
社からお知らせ
社説
ニュース速報
海外支局通信
広告:承ります
April Fool !
未分類

検索

カテゴリ:小説:植山青彦( 4 )

Bar "A SIN HE"

私のイギリス旅行の最後は、とあるバーだった。

ロンドンのウェルリバー通り ―19世紀には下級労働者のたまり場だったと説明を受けたこの場所も、100年後は市民の行き交う大通りだった ―に立ち並ぶ、多くの酒屋。そんな場所に構えるバーも珍しいが、ガイドによれば「とっておき」の店らしい。
c0006425_17413472.gif


入店
[PR]
by remarkabler | 2005-03-28 17:44 | 小説:植山青彦

踊り子の海 またの名を、君の視界

午後6時の南国の海は、思ったよりも静かだった。夕暮れの海水は視界をひどく狭め、自分の周りしか見えなかったけど、僕は安心感に浸っている。自分の口元から漏れる、気泡のごぼごぼという単調な音もまた、僕の気を落ち着かせるのに十分過ぎた。

3年前、彼女はここに来た。誰にも言わず、たったひとりで。

出国を知らず、彼女の家に僕が行ったときには「ちょっと踊りを見に行ってきます」という置手紙だけしか見つからなかった。何も連絡の無いままに半年が経つと、「ちょっと」という言葉の意味がわからなくなった。ちょっと、って少しでしょ?

行方を捜そうにも、海外と言うことしかわからない。彼女の親も、友人も、同僚も、彼女の恋人だと思ってた僕も、誰も行き先を知らなかった。彼女の両親は僕を責め立て続け、今は何の連絡も取っていない。彼女は行方不明ということで、警察沙汰にもなった。超能力者が探すと言うことでテレビ局が取材に来たこともあった。でも、何一つわからないままに1095回寝起きし、3年が経ってしまった。

だけど、2ヶ月前にタイで彼女のパスポートだけが見つかった、という報せを彼女の親から受けた。僕の行ったことの無い、南の小さな島の浜辺に落ちていたそうだ。その島へ、僕は今、ひとりで来た。3年経ったけど、僕はまだ彼女に会いたいから。

小さな島の海岸には椰子が生え、白い砂が広がり、滲んだ絵の具みたいにふわふわした青い海があった。空は青と言うより白く見えた。南国の蒸し暑さは意外と感じず、風がさらさらとしている印象だった。

彼女のパスポートは、この島の海岸にあったという。実物を見ると、砂で汚れて、海水で滲んで、文字は見えない。写真もゆがんでいるけど、写真の彼女は3年ぶりの笑顔でこちらを見ていた。

彼女はこの島に来た。僕はそう信じている。でも、彼女はもうこの島にいない。ジャングルと海と動物と、数十人の島民で成り立つこの島に、彼女はいない。滞在期間の7日間、どれだけ探しても、いなかった。あるのはただ、南の小さな島という存在だけ。

彼女を見つけられないまま、明日帰国する。彼女の見たかった踊りが何なのかすらわからない。僕は最後に、彼女が潜ったかもしれない、見たかもしれない、浸ったかもしれない海へ入ることにした。今思えば、それ以外に理由があったかもしれないけど。

浜辺から泳ぎ、早い海流に気をつけながら素潜りで深く沈んでいく。夕陽はおちかけ、オレンジ色から紫色へと変わった斜光が、海水に差し込んでいた。海水は思ったより冷たくて、頭の奥に氷の棒を差し込まれたみたいな感覚。不思議と息の苦しさは感じない。波も感じない。目の前には、白い海底と紫色に染まった海水しか見えない。

そんなとき、黒い魚と白い海月を見つけた。魚数匹が輪になり、海月はその上をゆったりと泳いでいる。全く動きの無い海中で、唯一踊っているように見えるその光景は、陽気で、でも少し妖気にも見えて、僕は見入った。

何か感じた瞬間、我に返った。

ゆっくりと、僕は海面へ向かって浮いて行く。陽はすっかり落ちていたが、僕は明るい気持ちだった。彼女は、やっぱりここに来たのか。あの魚と海月の踊りを、見に来たのか。月の下で踊る黒い服の人間のようなあの光景を。

彼女は珍しいほどロマンチストで、少し無茶なこともする人だった。なぜ、あの踊りを、ひとりで誰にも言わず見に来たのだろう。そして今、彼女はどこにいるんだろう。

あの魚と海月が答えを知っているような気がしたが、僕はあえて聞かないことにした。

海から上がると、真っ暗な空には本物の月が出ていた。
揺れる波が、踊り子だ。
ありがとう。
c0006425_171340.jpg

[PR]
by remarkabler | 2005-01-09 01:18 | 小説:植山青彦

American Japanese

「アナタハァ ドゥコカラ キタノディスカ? ハイ」
「アニタハァ ドゥクカラ キタァディスカァー」
「ノンノンノン…。 "ドゥコカラ"。 O.K?」
「ハーイ」 ……。

私は、先ほどから椅子に座り、アメリカの中学校の教室で行われているこのやり取りを熱心に聞いている…ふりをしていた。とても、こんなものが日本語の授業とは思えないからだ。笑いをこらえるのがつらい。汗が吹き出た。

私は、アメリカの中学校での日本語指導員に選ばれ、はるばるやってきた。アメリカ観光気分の軽い気持ちで引き受けた仕事だったが、今日のこの様子を見る限り、軽い気持ちで楽しめそうに無い。

ここまでだとは、正直思っていなかった。よく「アメリカン・ジャパニーズ」と揶揄される独特の発音であることは聞いていたが…。フランス人やカナダ人の日本語のほうが聞きやすい気がする。

「スラデハ、ニポンカラ、言語シドーキョーシナ人ウォ、オヨビシテイマス。タナーカ サンデス」。
この声で、我に返った。私は、椅子に座ったまま体が硬直していた。こちらを見た、たぶん45歳は超えているであろう、メガネを掛けたいかにも「熟練教師」の女性が話す「言葉」は、何度聞いてもつらかった。

慌てて立ち上がり、「どうも。日本から来ました、田中と申します。今回は、皆さんとお会いできて嬉しいです」。
慎重に言葉を選び、聞き取りやすいようにはっきりと発音していく。アメリカの中学生は皆、真剣にこちらを見ていた。

冷や汗が出るくらいに緊張したが、自己紹介を終えた。すると、「タナーカサンニィ、本場ノハトゥ音ウォキカセテモライマショー」と、熟年教師- ルーシー先生 -が言った。

「ディハァ、次ノ言葉ノハトゥ音ウォ…」そう言って、見せられたのは卵とタバコがかかれたボードだった。私は、少し唇を噛んで、頷いた。

「わかりました。それでは…、いいですか? まずは、eggのほうからです。「たまご」。「たまご」」生徒は、eggにだけ反応したが、その他の日本語は理解できていないようだった。

「次は…「たばこ」。「たばこ」。「た・ば・こ」」口を大きく動かしながら、大きな声ではっきりと発音する。教室には、私の「たばこ」しか聞こえないほど、誰も音を発さなかった。

言い終えると、なぜか拍手が起こった。生徒たちは目を丸くし、隣の友人たちと何か話している。聞こえてくる会話は、「あんなの無理だよ」「舌べらの構造が違うんじゃないか?」といった感じ。

「アリガトウゴザイマス。ディハァ、コンドゥハァ会話ノレンシューデス」。先生はそういいながら、教科書- 表紙には京都のゲイシャの写真で、真っ赤な文字で「日本語」と書かれている -を示した。

「ロバート、43ページノ、レッスン1カラ、マズ和夫ノ、ハナシウォヨンディクダサイ」
「ロバート」だけがとてもキレイに発音されたことに気付き、また笑いはこみ上げてきた。ロバート呼ばれた少年は、立ち上がった。

「僕ハ、日本ブシドーニノットリ、一人ノ人間トシテデハナク、一人ノ武士トゥシテ、生活シティイキテディス」

ぎこちないながらも、しっかりと読み終わったロバート少年は、緊張しているのかこちらを何度も見た。

「いいですね、うまいですよ」
といってやると、嬉しそうな顔をして座った。

「ユゥクデキマスネ。次ハ、カレン、続キデス」
カレンは立ち上がった。「僕ハ、秋刀魚ガ大好キデス。秋ハ、家族デオイシクイタダキマス」
「カレン、O.K。デハ、ココウォミンナデ繰リ返シマショウ。僕ハ秋刀魚ガ大好キデス」
生徒は一斉に言う。
「僕ハ秋刀魚ガ大好キデス」
ここで、完全に噴出してしまった。何だこの「会話」は。アメリカの日本語教科書はこんなものだから、今は「日本語が書けても話せないアメリカ人」ばかりなのだと、実感した。

日本が戦争に勝ってから60年。日本語教育はアメリカに完全に定着したといっていいだろう。しかし…。絶対に、こんな会話は使わないんじゃないか?

中高と9年間も日本語を練習するのに…。まったくアメリカ人は日本語がダメだ。「駅前留学」なんていうのもあるらしいが、そこで講師をするのは日本人ではなく、韓国人や中国人だと聞く。

授業は、「自分の好きな日本の祝日について」という内容に移っていた。とても普通に聞いていられるものではない。笑いが止まらなくなった。

……あぁ、ここで1年間何を教えればいいんだ? 今から頭が痛い。
[PR]
by remarkabler | 2004-12-23 18:59 | 小説:植山青彦

学校

2月。わたしがこの学校へ入ってから、もう3年が経とうとしている。

授業中に窓の外を見ると、灰色の空から雪が降っていた。誰もいない校庭に、葉のない桜の木。時々吹く風しか動きのないこの校庭も、あと1ヶ月も経って、入学式のころには桜が満開になるだろう。

3年前の入学式の日。桜がきれいだったね、とか、そういう思い出はない。その日は確か大雨で、暖かい日差しなんてまったく無くて。4月の生暖かい雨が、桜を散らしてしまった。中学生から高校生へと変わる人間の顔が、ずらっと並んだ体育館で、わたしはひとり、ちゃんと自分の仕事がこなせるかどうか、そわそわしていたことは覚えている。それは、緊張や不安に追われて、"きれいな"思い出なんてないということ。でも、今思えばそれも思い出だったりするかもしれない。

わたしは最近、50分の授業の中で、3回はこの3年間を回想している。何も無かった3年間と言っても、多少の記憶はあるみたい。

高校での生活は、3年間同じ動きを続けたみたいなものだった。毎日、校門をくぐり、靴を脱いで、椅子に座って、授業があって。最後はまた校門をくぐって、帰宅。それだけだった。始めのうちは熱心だったはずの部活動 -バドミントン- も、大して打ち込まないで、気付いたときに最後の夏は終わってた。好きな人が出来ちゃったこともない。平凡な生活を続けて、今日まで皆勤賞。平凡っていいことなのかな。

でも、平凡って、眠い。あぁ、字を書く手が重い。窓から顔を戻して、教室を見回すと、そういう顔ばかり。毛布みたいに暖かい空気が、わたしも眠くする。春夏秋に騒がしい教室も、冬だけは静か。3回も経験すればよくわかる。3年生の2月となると、ほとんど卒業後の進路が決まっているから、そういう雰囲気が、余計に教室を暖かく包んだせいもある。わたしも眠い。身体がだるい。あ、吉田がよだれを出してる。

時計を見た。あと1分だ。眠っている生徒も、"気配"を感じたのか顔を上げた。吉田はよだれを拭いてる。顔についた"ノートの痕"を気にしてる前田も。

…………ここの説明が終われば、終わる。もう黒板と時計を交互に見よう。

あと10秒。 …5、4、3、2、1秒。チャイムがやっと鳴った。

わたしは言った。
「はい、終わり。今日の範囲はここまで。ここは期末で出るからね! じゃあ、あいさつ」

学級委員の吉田が号令。 「起立、礼!」

3年前、教員一年目で赴任したこの学校。初めての入学式で、緊張の連続だった。でも、平凡だった。授業はつまらなかったし、部活顧問だったのに飽きちゃった。ごめんね! 

生徒より早く廊下に出ると、伸びを一回。外は雪が止み、今度は強風だった。こんな風景も何度見たかな。

わたしは、出席簿を持つと、職員室へとまた向かう。
[PR]
by remarkabler | 2004-12-18 02:14 | 小説:植山青彦

自社概要 従業員:1名

このサイトの記事は全て「うそニュース」です。気楽に読んで笑ってください。

虚報タイムスについて
  【よくお読みください】

虚報タイムスtwitter
紙面版のご案内

展示記録:
2007-2010年
武蔵野美術大学芸術祭にて新聞紙面作品を展示

mail
news.lie.net(アット)gmail.com

何か問題やお気づきの点がありましたら、メールやコメントにてお知らせください。


ニュース系リンク

世界びっくりニュース
虚構新聞社
Museum of Hoaxes
偽嘘新聞
アソビ・コム
笛育新聞社
バーチャルネットほら吹き娘 燕17歳
Dの嘘
脳内新聞(ブログ版)
ほほえ味屋
テクトイックス・タブロイド
bogusnews
Unidentifier
やゆよ記念財団
毎嘘タイムズ

その他リンク

猫とあじさい
新・手品師の裏側
Eccentric World of Shanla
AVANTI
Magicboy
幻想標本博物館
海外ボツ!News
なんでも評点
ABC振興会
AZOZ BLOG
TrekEarth
X51.ORG
Pya!

人気ジャンル

以前の記事

2015年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 03月
2010年 02月
2009年 06月
2009年 01月
2008年 07月
2008年 05月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
2005年 03月
2005年 02月
2005年 01月
2004年 12月
2001年 12月
2001年 04月
2001年 03月

お気に入りブログ

Mistery blog
読んだ海外ミステリ
100STORY
新月倶楽部
雲谷斎の「逢魔が時物語」...
rubytuesday ...
日々是読書
北イタリアの風景
政態観察ブログ版
キューブ水槽でアクアリウム
Jugemu - Magic
Creative Story
話すコトバをアタシは知らない
現代用語のクソ知識200...
蒼天     by 蒼唯 
地下唯我独走
わたしのとなりに誰かいる
foggyな読書
マジシャン南海子Diary
clear water
中国歴史小説と幻想的な恋の話
Tomp Stompの子育て記
コトバのタカラバコ
虹の螺旋
駿河木の家日記 sur...
F.A.Q.
GUYの日常
O V E R D O ...
Livre/Football
La noticia a...
~  想 奏 曲  ~
空の色
100年前のフランスの出来事
松田のネタ帳